コラム142:「こころの声に耳を傾け、思いに寄り添うためには…」 ~そばにあり続ける看護~

  • 穏やかな最期
  • 解決できない苦しみ
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  • 尊厳

厚生連伊勢原協同病院 緩和ケア病棟看護師

根本梨絵さま

 私は現在、神奈川県にある厚生連伊勢原協同病院の緩和ケア病棟の看護師として、勤務しています。緩和ケア病棟で出逢う患者さんや家族は、一期一会の出逢いであり、その時を大切に関わっているつもりでも、旅立たれた後に、自分の関わりが良かったのか、患者さんの苦痛に向き合えることが出来たのかと考えることがあります。また、患者さんから「もう、終わりにしたい」その言葉からは計り知れないほどの苦痛を、抱えており、患者さんのそばにただいることしか出来ない自分の無力さを痛感するばかりでした。

                          
 

 自分自身と向き合うために、エンドオブライフ・ケア援助者基礎講座に参加し、援助的コミュニケーションの重要性や、患者さんの苦しみをキャッチし支えを強める支援をしていくこと、自らの支えは何かを知るということを主に学びました。

 

 この研修の後に、A氏との関わりがありました。A氏80歳代男性、盲腸がんの終末期の患者さんで入院時より「自分のことは自分でやりたい。歩かないと、動けなくなってしまう。」歩くことに対して希望を持ち、自室からミニラウンジまでの歩行を日課にしていました。しかし、病状が進む中で歩行ができなくなり、自分のことは自分でという思いが叶えられなくなってきた中、「もう終わりにしたい」A氏の心の叫びが表出されました。

     

 私は、A氏と妻と一緒に時間を過ごし、無言の時間が過ぎる中、A氏を 一 人の人として今まで歩んできた人生を一緒に振り返りました。好きだった登山や、妻と日本中を旅行した話になると突然、A氏の目が輝きはじめ、思いを語ってくれました。沈黙と反復を繰り返しながら、A氏の心が開いていることを確信して、私は問いかけました。

                                                                                                                             

「A氏にとって、これまでの人生はかけがえ のない時間で、素晴らしい人生でありましたね。そして、これまで共に歩んでくださった 奥様に対しては、言葉に言い表せないほどの感謝の思いがあるのではないでしょうか。」

 

 A氏は静かに深く頷かれ、妻の目には涙が溢れていました。   

 

 この会話の後、ご自身で作成された旅のDVDを持参され、病棟の大型テレビで家族や病棟看護師に映像を見せてくださいました。言葉はもう発することが出来なくなっていましたが、穏やかに笑うA氏の顔が、今でも忘れられません。この一週間後、静かに旅立たれました。


 私はまだまだ、緩和ケアナースとして、また一人の人間として学ぶべきことが沢山あります。患者さんや家族との出逢いの中で、学ぶことができる時間はGIFTであり、患者さんの心の声を聴き、思いに寄り添うことを、これからも心に刻みながら、患者さんや家族の伴走者でありたいと思っています。                          

                                                                   

エンドオブライフ・ケア協会では、このような学び・気づきの機会となる研修やイベントを開催しております。活動を応援してくださる方は、よろしければこちらから会員登録をお願いします。

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