コラム144:目の前の人に自分は何ができるのか

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ぽかぽか在宅ケアクリニック院長

浜上知宏

(ELC第206回生)

 私は医師19年目になります。私は昨年、兵庫県北部の地元で在宅クリニックを開業しました。
私は、これまで外科医、救急医として、「目の前の人の命を救うこと」を使命に歩んできました。病気やけがを治すために何ができるかを考え続けた日々でした。今振り返ると医師としての「バージョン1.0」の時代です。


 しかし一方で、救命だけを望んでいるわけではない患者さんやご家族と出会い、「本当に求められていることは何だろう」と考えるようになりました。そして、病院から生活に近いプライマリ・ケアの道に飛び出しました。家庭医療・在宅医療を学ぶ中で、病気だけでなく、その人や家族を理解しようとする姿勢やコミュニケーションを学びました。私にとって、医師としての「バージョン2.0」が始まった時期です。


 そんな中、小澤竹俊先生の「死を前にした人に、なぜ私たちは関わり続けるのか」という問いに出会いました。その後、書籍で出会った「相手のすべてを理解することはできない」という言葉にも衝撃を受けました。私はそれまで、相手を理解しようと努力することが大切だと信じてきたからです。しかし、その言葉の真意に触れたとき、「自分が相手を理解しようとすること」と、「相手から『この人は私を理解してくれている』と思ってもらうこと」は、同じではないと気づかされました。


 その学びを深めたいと思い、エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座を受講しました。講座では、安心して語り合える場の中で、多くの気づきを得ました。そして、この学びは、死を前にした人だけでなく、苦しみを抱えるすべての人との関わりに通じるものだと実感しました。受講後は日々の診療や対話の中で、「相手を理解しよう」と力むよりも、「この人なら話を聴いてくれる」と感じてもらえることを意識するようになりました。私にとって、医師としての「バージョン3.0」の始まりでした。


「目の前の人に、自分は何ができるのか。」


これは、これからも向き合い続ける問いです。これまで学んできた「理解しようとする姿勢」と、ユニバーサル・ホスピスマインドで学んだ「理解してくれる人になるための関わり」を重ね合わせながら、患者さんやご家族、そして地域の方々と向き合っていきたいと思います。そして、これからも一人ひとりとの出会いを大切にしながら、医師としてさらにバージョンアップしていきたいと思います。

 

 

 

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